2022.10.20
メタバースと仮想空間の違いは?メタバースは私たちの生活をどう変えていく?
フェイスブックが社名をメタに変更したことから、メタバースが注目を集めるようになりました。ビジネスで使う企業も増えていますが、いまいちピンとこない人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、「メタバースって何?」「どうやって使うの?」という基本情報から、実際の活用事例までご紹介します。
メタバースとは「メタ(超越)」と「ユニバース(宇宙)」を合わせた造語で、インターネット上にある3次元の仮想空間を指すのが一般的です。新しい概念のため現時点ではさまざまな定義がありますが、共通していえるのは現実とは違う空間で他者と空間や体験を共有できる世界という点です。
現在はオンラインゲームなど娯楽分野で活用されるのが主流ですが、将来的にはビジネスの分野にも広がり、メタバースなしには仕事ができない日がくると推測されています。
メタバースと混同しやすいものに「あつまれどうぶつの森」や「Second Life」に代表される仮想空間がありますが、仮想空間は他者と交流するのはもちろん一人でもプレイできるのが特徴です。一方、メタバースは他者が存在するのを前提としているため、第三者と空間や体験を共有することを目的としています。
これまで「つながる、広がる、行き交う」という経験は現実世界でしか体験できませんでしたが、メタバースを活用すれば時間や場所を気にせず誰でも自由に体験できます。
例えば、メタバースは空間や人数の制約がないため、現実世界にはない店舗やイベント会場を設けたり、オフィスを構えて現実に近い感覚でオンライン会議ができたりします。
また、メタバースではアバターで理想の自分になれるほか、現実では困難な人でも自由に動き回ることが可能です。現実では諦めていたこともメタバースなら実現できるので、オンオフ問わずあらゆる場面で活用できるでしょう。
実際にメタバースを活用したサービスにはどのようなものがあるのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
イベント系メタバースとは仮想空間内で行うイベントのことで、その場にいるかのような体験ができるのが魅力です。参加者はアバターで会場に入り、椅子に座って登壇者のパフォーマンスを見たり、グループに分かれて意見交換を行ったりできます。現在はアイドルや芸能人が開催するイベントが主流ですが、就職活動のイベントや観光案内など、エンターテイメント分野以外の活用も増えつつあります。
ゲーム系メタバースとは、有名なゲームの世界の中にアバターとなって参加できるサービスのことです。お気に入りのキャラクターの服装を自分のアバターに着せられるほか、友達のアバターと一緒にテーマパークのように歩き回ることもできます。好きなゲームの世界に入り込めるため、ヒット作を持つゲーム会社やアニメ制作会社から注目を集めている活用方法です。
クリエーター系メタバースとは、ユーザーが好きなアイテムを作って自由に空間を生み出し、第三者と共有して一緒に楽しむことを目的としたメタバースのことです。ゲームのような明確な目的が存在しないため、どのように楽しむかはユーザーが自由に決められます。元祖メタバースともいえる楽しみ方で、自由度の高さから近年再び注目されています。
ビジネス系メタバースとはビジネスの分野でメタバースを活用することで、時間や場所を問わないため「全国から集客を見込める」「アバターを通して自然に接客できる」のが魅力です。前述の通りメタバース内に店舗を構えて商品やサービスを販売するほか、オフィスを設けてアバターで出勤することもできます。
ここでは、メタバースと間違えやすいVRやARについて解説していきます。
VRとはVR機器を装着することで仮想空間の中を自由に動き回れるようになる技術のことで、ARとは実在する風景にバーチャルの情報を重ねて表示する拡張現実のことです。メタバースは第三者と交流する仮想空間のことなので、VRやARはメタバースに入り込むためのツールの一つといえるでしょう。
メタバースのアクセス手段は特に定義されていないため、VR機器がなくても体験できます。使用できるデバイスは、VR機器、パソコン、スマートフォン、ゲーム機などさまざまです。ただし、VR機器は仮想空間で実際に自由に動き回れるという点で、メタバースと最も相性が良いデバイスといわれています。臨場感を楽しむためにVR機器を使う人もいますが、メタバースの目的はアバターを通して他者と体験を共有することなので、あくまでも選択肢の一つといえるでしょう。
ここでは、メタバースで何ができるのかをエンタメ、ビジネス、教育の分野ごとに具体例で解説します。
エンタメにおいてはゲームやライブイベントなどで活用されることが主ですが、今後は観光やスポーツ観戦でも発展するといわれています。将来的には自宅にいながら世界中の観光地を見て回ったり、現場にいるような感覚でスポーツ観戦を楽しんだりするのが日常的になるかもしれません。メタバースは「実在の会場を必要としない」「世界中の人が参加できる」「遠方の人同士の交流を可能にする」ため、エンタメ分野で新たなビジネスチャンスがあるといえるでしょう。
ビジネスの分野では、「メタバース上で展示会や商品PRを行う」「広告に活用する」などさまざまな使い方ができます。現実世界のように土地や人が必要ないため、コストを抑えながら商談のチャンスを拡大することが可能です。実際の店舗やサービスとメタバース上での体験を組み合わせることで、新たな付加価値をつけることもできます。
また、メタバース研修など社員教育に使うのも効果的です。現実では再現が難しい状況もメタバースでつくり出せるので、緊急時の訓練などさまざま活用できるでしょう。
教育の分野では、オンライン授業やオープンキャンパス、運動会、模擬面接などが代表的な活用例です。メタバースならアバターで参加できるため、学校に行けない生徒にとっては登校のハードルを下げることができます。オンライン留学など、日本にいながら語学学習を深めることも可能です。メタバースは年齢・性別問わずに参加できるため、活用次第によっては誰もが平等に教育を受けられる場をつくり出すことができるでしょう。
ここでは、エンタメ・ビジネス・教育における活用事例を見ていきます。
Clusterとは、バーチャル空間に集まって遊べるメタバースプラットフォームのことで、自分の好きな空間をユーザーがつくりだせるほか、現実にはあり得ないような世界やゲームを楽しむこともできます。日夜さまざまなイベントが開催されており、ユーザー同士の交流の場として活用されています。
VRChatとは、バーチャル空間で世界中のユーザーと交流できるコミュニケーションサービスのことです。楽しめるのは会話だけではなく、ユーザー同士でアート作品を共同で作ったり、ゲームやイベントで遊んだりすることもできます。自分を表現しながら世界中の人と交流できるため、社交不安の克服に役立ったというユーザーも少なくありません。
大和ハウスのメタバース住宅展示場とは、アバターを通して仮想空間上の住宅展示場を自由に見学できるサービスのことです。アバタースタッフから案内を受けられるほか、アバター同士で会話することもできます。「地面から屋根までさまざまな角度で確認できる」「子どもやペットの視点で確認できる」「好みの色や素材に瞬時に変えられる」など、現実ではできないことが可能になるのが魅力です。
Horizon WorkRoomsとは、VRゴーグルをつけて空間を共有するバーチャル会議室のことで、遠方の同僚ともアバターを通して対面で会議ができます。画面共有はもちろん共有のホワイトボードも用意されているため、1つのボードにアイデアを書き出し視覚化することが可能です。身振り手振りはそのままアバターで再現されるため、同じオフィスにいる感覚で会議に集中できるでしょう。
N高等学校・S高等学校ではオンライン授業を行っており、仮想空間で実験を行ったり、古代生物に触れたりして立体的に学ぶことができます。語学学習ではAIキャラクターと話しながらコミュニケーション力を高められるほか、英語のグループレッスンを受けることも可能です。運動会やカラオケ大会などもオンラインで行われるため、場所を問わずに仲間と交流できます。
FAMcampusとは仮想教育空間のことで、生徒や教師がアバターとなって学習活動を行います。教室や面談室、休憩室など各種スペースが用意されており、授業を受けるのはもちろん休み時間に個別に先生と話すことも可能です。アバターでお互いを身近に感じられるため、ユーザーからは「集中力が続く」「コミュニケーションがとれるのでモチベーションが高まる」など前向きな感想が上がっています。
ここでは、メタバースの始め方や可能性について解説します。
メタバースは、「メタバースサービスに登録→任意の端末でアクセス」することで簡単に始められます。メタバースについて解説するサイトの中には「仮想通貨取引所に登録しなければ利用できない」と説明するところが多いですが、必ずしも登録が必要というわけではありません。メタバースサービスによっては仮想通貨口座がなくても利用できるので、気になる方はチェックしてみましょう。
メタバースは生活のすべてを仮想空間に置き換えることを目指しており、エンタメや教育、ビジネスだけでなくあらゆる分野で新しいマーケットチャンスを生むといわれています。今後メタのような世界規模の企業がメタバースのプラットフォームを提供すれば、世界中の企業が参入し競争の時代に入るでしょう。仮想空間でアバターのファッションや土地などが販売されるほか、オフィスや店舗をメタバース内に移行させる企業が増えると推測されます。
企業にとってはビジネスチャンスの拡大となりますが、ユーザーを獲得できるかどうかは「リアルを超えた体験ができるか」がポイントとなるでしょう。
メタバースは私たちの生活を前向きに変える可能性がありますが、クリアしなければならない課題もあります。
メタバースは法整備が進んでいないため、現実ではある権利がメタバース内で侵害されるケースが起こり得ます。現在の法令では物理的に存在するものに対して所有権があるため、メタバース内で商品授受に関する詐欺行為があっても法的に対応するのが困難な状況です。このような問題に対応するために、2021年11月には「バーチャル渋谷」の知見をもとに「バーチャルコンソーシアム」が発足されました。コンソーシアムではメタバースの発展に向けてガイドラインの策定を進めており、安全に利用できる秩序の構築が期待されます。
多くの人がメタバースを楽しむためにはスマートフォンのようにVR機器が普及することが必要といわれますが、価格が高額なため普及が進んでいないのが現実です。現在の最新機器「Meta Quest 2」の販売価格は2022年10月時点で59,400円(税込)と、一般の方にとっては気軽に購入しづらい価格です。現時点では一部のコア層のみがVR機器を持ちユーザー層が限られているため、安価な価格のVR機器や便利なアプリの開発などが進み、アクセスしやすくなることが求められます。
さまざまなメタバースを提供するサービスが増えている一方で、各サービスの規格が統一されていないことが1つの課題といえます。現状では、さまざまなメタバースを探して赴くことが可能ですが、例えば、アバターはそれぞれのメタバースによって既存のものを使わなくてはいけない場合がほとんどで、全てのメタバースで共通したアバターを使うことはできません。また、多くの場合にはそれぞれのメタバースプラットフォームはそれぞれのソフトウェアで動いているため、シームレスに(今、ブラウザでいろいろなサイトを見るように)他のメタバースサービスにアクセスできないというのが現状です。
実際に先ほど紹介した「VRChat」においては、VRChat内のワールドでは共通したアバターを使うことができますが、例えば同じアバターで直接「Cluster」のワールドに行くことはできないのです。これはアバター情報の形式が2つのサービスで違うことに起因しています。このようにメタバースには規格が統一されていないという課題があります。
このように規格が統一されていないことによってサービスやプラットフォーム間で自由な行き来ができないという現状では、メタバースの「さまざまな仮想空間を自由に行き来できる」という強みが十分に発揮されていないといってもいいでしょう。
このようにメタバースはさまざまな分野で活用が期待されています。しかしながら、現状ではまだまだ私たちの生活に取り入れられるほど普及しているとはいえないでしょう。新型感染症の影響でテレワークが普及しましたが、そのような背景でもメタバース上で仕事をこなしたり、会議を行ったりしている人はまだまだ少ないといえます。
このような視点から見ると現状ではメタバースという言葉が「よく分からないけど革新的で私たちの生活を新しいステップに上げてくれるもの」という抽象的な理解のされ方をしているように思えるのです。つまり、メタバースのよい点や革新的な点ばかりが取り沙汰される一方で、法律問題や機材の問題ではなく、実際に、実用・活用する目線でメタバースをどうやって扱うのが効果的なのか、活用する上でどのような課題があるのかということが議論されることは少ないように思われます。
Googleトレンドによるとメタバースという言葉が話題になったのは2021年の11月ごろからでした。それから今までに、メタバースを活用したさまざまなサービスやコンテンツが登場していますがまだまだマス層に浸透したといえるものはないように思われます。個人がアクセスするサービスやコンテンツの領域ではメタバースはSNSや大手ECのように日常的に利用できるほどの距離感にはないといっていいでしょう。
このままではメタバースは、鳴り物入りで登場し、一時の話題をさらっただけのいわゆる「バズワード」になってしまうかもしれません。ここまで紹介してきた通り確かに優れた特徴を持つメタバースは、私たちの生活を豊かにする可能性のあるものです。どのようにすればメタバースは「バズワード」という一時の流行を超え、スタンダードなものになっていけるのでしょうか。
メタバースを「バズワード」で終わらせないためには、メタバースを利用するということを選択できる世の中にしていくということが必要であると考えます。メタバースは仮想空間を活用するという特徴上、現実世界でできることを何でも代替していくべきだと考えられたりもしますが、実際にメタバースが普及するためには現実的ではないでしょう。例えば、現状メタバースを最大限活用するにはVR機器を装着するなどの必要がありますが、メタバース内で仕事を行うとして毎日8時間VR用ヘッドセットを付け続けるというのは首や肩への負担を考えるとネガティブな影響の方が大きいはずです。このように全てをメタバースで置き換えるのは難しいです。
しかし、個人が選択できる形で活用していくことなら現実的に可能であり、合理的ではないでしょうか。リモートワークを例にとって考えてみると、株式会社パーソル総合研究所が行った調査によるとテレワーク時は、全体の64.7%が出社時よりも生産性が下がると答え、残りの35%近くが生産性が上がると答えました。6割もの人の生産性が下がるのであれば完全テレワークにする必要はないですし、3割の人の生産性が上がるのであれば、完全出社にするべきでもないでしょう。この違いは個人の向き不向きだけでなく、職種や業務内容にも関係するはずです。このようにテレワークはその人、働き方に合わせて選べるようにするのが合理的ですし、それはメタバースにおいても同じなのではないでしょうか。確かに色々なことを代替できるメタバースは便利ですが、全てをメタバースに置き換えるのではなくあくまでも1つの選択肢として選べるものとして活用することがメタバースを一時の流行りで終わらせないための道なのではないでしょうか。
今回の記事ではメタバースの基本情報から可能性まで解説しました。メタバースは現在発展途上にありますが、今後あらゆる分野で発展し、市場として成長すると予測されます。
シーズクラフトでは、アニメやゲームの制作だけでなくビジネスシーンでのメタバースの活用もサポートしています。実際の制作例としては、仮想空間で自社の魅力をリアルに伝えられる「メタバース会社案内」、輸送コストやリスクを減らして美術品を展示できる「メタバース美術館」などが挙げられます。
メタバースなら場所や時間、空間に捉われず多くの人にアプローチできるので、ビジネス活用をご検討の方はぜひお気軽にご相談ください。
メタバースとは
メタバースとは「メタ(超越)」と「ユニバース(宇宙)」を合わせた造語で、インターネット上にある3次元の仮想空間を指すのが一般的です。新しい概念のため現時点ではさまざまな定義がありますが、共通していえるのは現実とは違う空間で他者と空間や体験を共有できる世界という点です。
現在はオンラインゲームなど娯楽分野で活用されるのが主流ですが、将来的にはビジネスの分野にも広がり、メタバースなしには仕事ができない日がくると推測されています。
メタバースと仮想空間の違い
メタバースと混同しやすいものに「あつまれどうぶつの森」や「Second Life」に代表される仮想空間がありますが、仮想空間は他者と交流するのはもちろん一人でもプレイできるのが特徴です。一方、メタバースは他者が存在するのを前提としているため、第三者と空間や体験を共有することを目的としています。
メタバースはつながる、広がる、行き交うを実現する
これまで「つながる、広がる、行き交う」という経験は現実世界でしか体験できませんでしたが、メタバースを活用すれば時間や場所を気にせず誰でも自由に体験できます。
例えば、メタバースは空間や人数の制約がないため、現実世界にはない店舗やイベント会場を設けたり、オフィスを構えて現実に近い感覚でオンライン会議ができたりします。
また、メタバースではアバターで理想の自分になれるほか、現実では困難な人でも自由に動き回ることが可能です。現実では諦めていたこともメタバースなら実現できるので、オンオフ問わずあらゆる場面で活用できるでしょう。
メタバースの種類
実際にメタバースを活用したサービスにはどのようなものがあるのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
イベント系メタバース
イベント系メタバースとは仮想空間内で行うイベントのことで、その場にいるかのような体験ができるのが魅力です。参加者はアバターで会場に入り、椅子に座って登壇者のパフォーマンスを見たり、グループに分かれて意見交換を行ったりできます。現在はアイドルや芸能人が開催するイベントが主流ですが、就職活動のイベントや観光案内など、エンターテイメント分野以外の活用も増えつつあります。
ゲーム系メタバース
ゲーム系メタバースとは、有名なゲームの世界の中にアバターとなって参加できるサービスのことです。お気に入りのキャラクターの服装を自分のアバターに着せられるほか、友達のアバターと一緒にテーマパークのように歩き回ることもできます。好きなゲームの世界に入り込めるため、ヒット作を持つゲーム会社やアニメ制作会社から注目を集めている活用方法です。
クリエーター系メタバース
クリエーター系メタバースとは、ユーザーが好きなアイテムを作って自由に空間を生み出し、第三者と共有して一緒に楽しむことを目的としたメタバースのことです。ゲームのような明確な目的が存在しないため、どのように楽しむかはユーザーが自由に決められます。元祖メタバースともいえる楽しみ方で、自由度の高さから近年再び注目されています。
ビジネス系メタバース
ビジネス系メタバースとはビジネスの分野でメタバースを活用することで、時間や場所を問わないため「全国から集客を見込める」「アバターを通して自然に接客できる」のが魅力です。前述の通りメタバース内に店舗を構えて商品やサービスを販売するほか、オフィスを設けてアバターで出勤することもできます。
メタバースとVRやARの違い
ここでは、メタバースと間違えやすいVRやARについて解説していきます。
メタバースとVR・ARの違い
VRとはVR機器を装着することで仮想空間の中を自由に動き回れるようになる技術のことで、ARとは実在する風景にバーチャルの情報を重ねて表示する拡張現実のことです。メタバースは第三者と交流する仮想空間のことなので、VRやARはメタバースに入り込むためのツールの一つといえるでしょう。
VR機器が無ければメタバースを体験できない?
メタバースのアクセス手段は特に定義されていないため、VR機器がなくても体験できます。使用できるデバイスは、VR機器、パソコン、スマートフォン、ゲーム機などさまざまです。ただし、VR機器は仮想空間で実際に自由に動き回れるという点で、メタバースと最も相性が良いデバイスといわれています。臨場感を楽しむためにVR機器を使う人もいますが、メタバースの目的はアバターを通して他者と体験を共有することなので、あくまでも選択肢の一つといえるでしょう。
メタバースでは何ができるのか
ここでは、メタバースで何ができるのかをエンタメ、ビジネス、教育の分野ごとに具体例で解説します。
エンタメにおける活用
エンタメにおいてはゲームやライブイベントなどで活用されることが主ですが、今後は観光やスポーツ観戦でも発展するといわれています。将来的には自宅にいながら世界中の観光地を見て回ったり、現場にいるような感覚でスポーツ観戦を楽しんだりするのが日常的になるかもしれません。メタバースは「実在の会場を必要としない」「世界中の人が参加できる」「遠方の人同士の交流を可能にする」ため、エンタメ分野で新たなビジネスチャンスがあるといえるでしょう。
ビジネスにおける活用
ビジネスの分野では、「メタバース上で展示会や商品PRを行う」「広告に活用する」などさまざまな使い方ができます。現実世界のように土地や人が必要ないため、コストを抑えながら商談のチャンスを拡大することが可能です。実際の店舗やサービスとメタバース上での体験を組み合わせることで、新たな付加価値をつけることもできます。
また、メタバース研修など社員教育に使うのも効果的です。現実では再現が難しい状況もメタバースでつくり出せるので、緊急時の訓練などさまざま活用できるでしょう。
教育における活用
教育の分野では、オンライン授業やオープンキャンパス、運動会、模擬面接などが代表的な活用例です。メタバースならアバターで参加できるため、学校に行けない生徒にとっては登校のハードルを下げることができます。オンライン留学など、日本にいながら語学学習を深めることも可能です。メタバースは年齢・性別問わずに参加できるため、活用次第によっては誰もが平等に教育を受けられる場をつくり出すことができるでしょう。
実際のメタバース活用事例
ここでは、エンタメ・ビジネス・教育における活用事例を見ていきます。
エンタメ領域:Cluster
Clusterとは、バーチャル空間に集まって遊べるメタバースプラットフォームのことで、自分の好きな空間をユーザーがつくりだせるほか、現実にはあり得ないような世界やゲームを楽しむこともできます。日夜さまざまなイベントが開催されており、ユーザー同士の交流の場として活用されています。
エンタメ領域:VRChat
VRChatとは、バーチャル空間で世界中のユーザーと交流できるコミュニケーションサービスのことです。楽しめるのは会話だけではなく、ユーザー同士でアート作品を共同で作ったり、ゲームやイベントで遊んだりすることもできます。自分を表現しながら世界中の人と交流できるため、社交不安の克服に役立ったというユーザーも少なくありません。
ビジネス領域:大和ハウス「メタバース住宅展示場」
大和ハウスのメタバース住宅展示場とは、アバターを通して仮想空間上の住宅展示場を自由に見学できるサービスのことです。アバタースタッフから案内を受けられるほか、アバター同士で会話することもできます。「地面から屋根までさまざまな角度で確認できる」「子どもやペットの視点で確認できる」「好みの色や素材に瞬時に変えられる」など、現実ではできないことが可能になるのが魅力です。
ビジネス領域:Horizon WorkRooms
Horizon WorkRoomsとは、VRゴーグルをつけて空間を共有するバーチャル会議室のことで、遠方の同僚ともアバターを通して対面で会議ができます。画面共有はもちろん共有のホワイトボードも用意されているため、1つのボードにアイデアを書き出し視覚化することが可能です。身振り手振りはそのままアバターで再現されるため、同じオフィスにいる感覚で会議に集中できるでしょう。
教育領域:角川ドワンゴ学園
N高等学校・S高等学校ではオンライン授業を行っており、仮想空間で実験を行ったり、古代生物に触れたりして立体的に学ぶことができます。語学学習ではAIキャラクターと話しながらコミュニケーション力を高められるほか、英語のグループレッスンを受けることも可能です。運動会やカラオケ大会などもオンラインで行われるため、場所を問わずに仲間と交流できます。
教育領域:FAMcampus
FAMcampusとは仮想教育空間のことで、生徒や教師がアバターとなって学習活動を行います。教室や面談室、休憩室など各種スペースが用意されており、授業を受けるのはもちろん休み時間に個別に先生と話すことも可能です。アバターでお互いを身近に感じられるため、ユーザーからは「集中力が続く」「コミュニケーションがとれるのでモチベーションが高まる」など前向きな感想が上がっています。
メタバースで私たちの生活がどう変わるか
ここでは、メタバースの始め方や可能性について解説します。
メタバースの始め方
メタバースは、「メタバースサービスに登録→任意の端末でアクセス」することで簡単に始められます。メタバースについて解説するサイトの中には「仮想通貨取引所に登録しなければ利用できない」と説明するところが多いですが、必ずしも登録が必要というわけではありません。メタバースサービスによっては仮想通貨口座がなくても利用できるので、気になる方はチェックしてみましょう。
メタバースは新しい価値を創造する
メタバースは生活のすべてを仮想空間に置き換えることを目指しており、エンタメや教育、ビジネスだけでなくあらゆる分野で新しいマーケットチャンスを生むといわれています。今後メタのような世界規模の企業がメタバースのプラットフォームを提供すれば、世界中の企業が参入し競争の時代に入るでしょう。仮想空間でアバターのファッションや土地などが販売されるほか、オフィスや店舗をメタバース内に移行させる企業が増えると推測されます。
企業にとってはビジネスチャンスの拡大となりますが、ユーザーを獲得できるかどうかは「リアルを超えた体験ができるか」がポイントとなるでしょう。
メタバースが抱える課題
メタバースは私たちの生活を前向きに変える可能性がありますが、クリアしなければならない課題もあります。
法整備が進んでいない
メタバースは法整備が進んでいないため、現実ではある権利がメタバース内で侵害されるケースが起こり得ます。現在の法令では物理的に存在するものに対して所有権があるため、メタバース内で商品授受に関する詐欺行為があっても法的に対応するのが困難な状況です。このような問題に対応するために、2021年11月には「バーチャル渋谷」の知見をもとに「バーチャルコンソーシアム」が発足されました。コンソーシアムではメタバースの発展に向けてガイドラインの策定を進めており、安全に利用できる秩序の構築が期待されます。
機器の普及が進んでいない
多くの人がメタバースを楽しむためにはスマートフォンのようにVR機器が普及することが必要といわれますが、価格が高額なため普及が進んでいないのが現実です。現在の最新機器「Meta Quest 2」の販売価格は2022年10月時点で59,400円(税込)と、一般の方にとっては気軽に購入しづらい価格です。現時点では一部のコア層のみがVR機器を持ちユーザー層が限られているため、安価な価格のVR機器や便利なアプリの開発などが進み、アクセスしやすくなることが求められます。
規格が統一されていない
さまざまなメタバースを提供するサービスが増えている一方で、各サービスの規格が統一されていないことが1つの課題といえます。現状では、さまざまなメタバースを探して赴くことが可能ですが、例えば、アバターはそれぞれのメタバースによって既存のものを使わなくてはいけない場合がほとんどで、全てのメタバースで共通したアバターを使うことはできません。また、多くの場合にはそれぞれのメタバースプラットフォームはそれぞれのソフトウェアで動いているため、シームレスに(今、ブラウザでいろいろなサイトを見るように)他のメタバースサービスにアクセスできないというのが現状です。
実際に先ほど紹介した「VRChat」においては、VRChat内のワールドでは共通したアバターを使うことができますが、例えば同じアバターで直接「Cluster」のワールドに行くことはできないのです。これはアバター情報の形式が2つのサービスで違うことに起因しています。このようにメタバースには規格が統一されていないという課題があります。
このように規格が統一されていないことによってサービスやプラットフォーム間で自由な行き来ができないという現状では、メタバースの「さまざまな仮想空間を自由に行き来できる」という強みが十分に発揮されていないといってもいいでしょう。
メタバースへの期待と現実
メタバースのよい点ばかりが取り沙汰されている
このようにメタバースはさまざまな分野で活用が期待されています。しかしながら、現状ではまだまだ私たちの生活に取り入れられるほど普及しているとはいえないでしょう。新型感染症の影響でテレワークが普及しましたが、そのような背景でもメタバース上で仕事をこなしたり、会議を行ったりしている人はまだまだ少ないといえます。
このような視点から見ると現状ではメタバースという言葉が「よく分からないけど革新的で私たちの生活を新しいステップに上げてくれるもの」という抽象的な理解のされ方をしているように思えるのです。つまり、メタバースのよい点や革新的な点ばかりが取り沙汰される一方で、法律問題や機材の問題ではなく、実際に、実用・活用する目線でメタバースをどうやって扱うのが効果的なのか、活用する上でどのような課題があるのかということが議論されることは少ないように思われます。
メタバースが「バズワード」で終わらないためには
Googleトレンドによるとメタバースという言葉が話題になったのは2021年の11月ごろからでした。それから今までに、メタバースを活用したさまざまなサービスやコンテンツが登場していますがまだまだマス層に浸透したといえるものはないように思われます。個人がアクセスするサービスやコンテンツの領域ではメタバースはSNSや大手ECのように日常的に利用できるほどの距離感にはないといっていいでしょう。
このままではメタバースは、鳴り物入りで登場し、一時の話題をさらっただけのいわゆる「バズワード」になってしまうかもしれません。ここまで紹介してきた通り確かに優れた特徴を持つメタバースは、私たちの生活を豊かにする可能性のあるものです。どのようにすればメタバースは「バズワード」という一時の流行を超え、スタンダードなものになっていけるのでしょうか。
メタバースを「選択」できる世の中へ
メタバースを「バズワード」で終わらせないためには、メタバースを利用するということを選択できる世の中にしていくということが必要であると考えます。メタバースは仮想空間を活用するという特徴上、現実世界でできることを何でも代替していくべきだと考えられたりもしますが、実際にメタバースが普及するためには現実的ではないでしょう。例えば、現状メタバースを最大限活用するにはVR機器を装着するなどの必要がありますが、メタバース内で仕事を行うとして毎日8時間VR用ヘッドセットを付け続けるというのは首や肩への負担を考えるとネガティブな影響の方が大きいはずです。このように全てをメタバースで置き換えるのは難しいです。
しかし、個人が選択できる形で活用していくことなら現実的に可能であり、合理的ではないでしょうか。リモートワークを例にとって考えてみると、株式会社パーソル総合研究所が行った調査によるとテレワーク時は、全体の64.7%が出社時よりも生産性が下がると答え、残りの35%近くが生産性が上がると答えました。6割もの人の生産性が下がるのであれば完全テレワークにする必要はないですし、3割の人の生産性が上がるのであれば、完全出社にするべきでもないでしょう。この違いは個人の向き不向きだけでなく、職種や業務内容にも関係するはずです。このようにテレワークはその人、働き方に合わせて選べるようにするのが合理的ですし、それはメタバースにおいても同じなのではないでしょうか。確かに色々なことを代替できるメタバースは便利ですが、全てをメタバースに置き換えるのではなくあくまでも1つの選択肢として選べるものとして活用することがメタバースを一時の流行りで終わらせないための道なのではないでしょうか。
まとめ
今回の記事ではメタバースの基本情報から可能性まで解説しました。メタバースは現在発展途上にありますが、今後あらゆる分野で発展し、市場として成長すると予測されます。
シーズクラフトでは、アニメやゲームの制作だけでなくビジネスシーンでのメタバースの活用もサポートしています。実際の制作例としては、仮想空間で自社の魅力をリアルに伝えられる「メタバース会社案内」、輸送コストやリスクを減らして美術品を展示できる「メタバース美術館」などが挙げられます。
メタバースなら場所や時間、空間に捉われず多くの人にアプローチできるので、ビジネス活用をご検討の方はぜひお気軽にご相談ください。
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